12.ビクセンGP赤道儀の赤経・赤緯ドライブ改造
12.1 ビクセンGP赤道儀(ドイツ式)の構造
ビクセンのGP/SP等の赤道儀は、上記で示すようなドイツ式の架台です。この形式の架台の特徴は、極方向にむけられる赤経軸と、それに直行する赤緯軸の片方の先端に望遠鏡などの機器が搭載され、その赤経軸を基準にしてその反対側には搭載された機器の重量を相殺するようなバランスウエイトが配置されていることです。
市販の望遠鏡は概ねこのドイツ式の赤道儀と共に販売されています。赤道儀そのもののデザインは望遠鏡毎に異なり、それぞれの軸の微動回転を可能にするフォームホィールとウォームギアのギア比も異なります。しかし、基本的な構造は同じなので自動導入に関する改造の手法はおおむね同じです。それでも、赤道儀の種別によってはステッピングモータ台座を保持するための機構がないばあには、その改造にやや苦労することになります。幸いビクセンのGPとSPの後期版の赤道儀は純正のモータドライブを取り付けられるような設計になっていますから、採用するステッピングモータの種別さえ決まってしまえば駆動装置の設計は可能になる訳です。後に詳しく説明しますが、ステッピングモータは標準タイプのものとその標準タイプのものに減速機が付いたものの2種類の選択肢があります。今回設計するモータ台座灯の駆動装置は、標準タイプのステッピングモータを採用することを前提に設計を進めます。
12.2 ビクセンGP赤道儀の駆動装置と各部名称
<GP赤道儀と駆動装置>
GP赤道儀の赤経・赤緯駆動は、同一の駆動装置で行われることが望ましい。というのも、同じ駆動装置ならば、モータとモータ台座を共通化することで製作そのものが容易になるだけでなく、維持管理も容易になるからです。
駆動装置を共通化することは第一に赤経軸と赤緯軸の軸中心とモータ軸の中心間距離が等しくならなくてはなりません。たとえ等しくならなくとも若干の位置調整を行うことで赤経・赤緯軸とモータのギアが正しくかみ合うことが求められます。
上記の駆動部の形状をみると一見同じ駆動装置では作動できないような感じを受けます。しかし、両軸のギア軸から台座の形状を考えてみると、この赤道儀が非常に良く考えられた設計になっていることが分かります。幸いなことに、ビクセンのGP赤道儀はこれらの位置関係がほぼ同じになるように設計されているのです。
両ギアの中心間距離は、赤経軸と赤緯軸とも減速機のない42mmモータを使用した場合には、実質34.7mmでほぼ同じで、減速機付きのモータを使用した場合でも実質27mm前後(モータで若干異なる)ですが、軸間そのものはやはり同じです。
実際の値が次ページからの図で示されていますが、この状況が良く分かります。一般に減速機付きのモータの方が最終的な駆動軸の位置がモータ中心から外側にずれているので、赤経・赤緯軸に近い位置を取れるので採用するギアのサイズも小さくできるという利点があります。しかし、減速機付きのモータは、通じようのモータに比べて3倍(15000円)程の値段がしますから、そのようなモータを採用するか否かは若干の考慮が必要です。減速機付きのモータを採用すると回転トルクや減速比の面で有利ですが、通常のステッピングモータが1000円程から入手できることを考えると、両軸で採用すると15倍ほどの費用がかかる訳ですから、古い赤道儀のレストア用としてはちょっと採用できないのかもしれません。
12.3 ビクセンGP赤道儀の赤経軸 RAの構造とギアボックス-1
ビクセン製のGP赤道儀は赤経軸の駆動装置を設置するためのステージとそれを覆うプラスチック製のボックスが標準装備されています。これは天体の自動追尾を意図するもので、駆動用のモータはオプションとして装備するよう設計になっています。つまり、今回の改造に当たってステッピングモータ台座がこのステージ部分で固定できれば良いということになります。ビクセンの優れたところは、非常にシンプルな構造にもかかわらずモータ機構をしっかりと固定できるように設計されていることです。モータの位置決めは20mm幅で7mm程の凹み部分で行い、駆動装置の保持はボルト締めということになっています。
つまり、この領域にしっかりと収まるものがあり、ボルト穴が形成されていればよいということになります。当然、ビクセンオリジナルな固定方法とは若干異なりますが、要はこの部分はアルミ板で代用することができるのです。
12.4 ビクセンGP赤道儀の赤緯軸 DECの構造とギアボックス
上記の設計は、赤経・赤緯軸共通のモータ台座のものです。位置決め用の部品は厚みが7mmではなく5mmのものが採用されています。これは、赤経部の位置決めのサイズに合わせているためです。この部分のみ変更してもよいのですが、そのようなことをしても余り利点がないので統一しようとします。また、ステッピングモータ軸用の穴は、標準モータ用の円状のものと減速機付きのモータ用に楕円形の穴のあいたものが設計として示されています。この部分も共通化するのであれば、モータ軸用の穴は楕円形状のものを採用し、その台座を共通仕様とします。
12.5 ビクセンGP赤道儀の赤緯軸 DECの構造とギアボックス
ビクセン製のGP赤道儀の赤緯軸は駆動装置を取り付けられるような設計になっています。
しかし、古いSPの一部の機種はそのような設計になっていません。これは、今日のように自動導入が基本となる両軸駆動ではなく、単に赤経軸の回転のみで星の自動追尾を可能にするということが一般的だったからです。
赤緯軸には赤経部のような駆動装置を設定するためのステージというものは存在していません。
それでも、駆動装置の取り付け箇所はありますから、問題はありません。赤緯軸における駆動装置の取り付けは、赤緯ウォームギアの軸受け部分を設置ステージとして行うことになります。幸いなことに、GPの赤経軸のウォームギアの軸受け部分とステージの位置関係が赤緯軸とほぼ同じサイズになっています。このことは、前述のような同一の駆動装置を採用することの最も重要な要因となっています。
12.6 ビクセンGP赤道儀の赤経・赤緯軸 台座の製作
<赤経・赤緯台座の製作>
前記、赤経・赤緯台座の設計に従って、アルミニウム板とLアングル材から台座を製作します。
ステッピングモータの台座は、Lアングル材から製作します。このLアングルは建築サッシ用の部材でA6063という6000系(Al-Mg-Si系)の熱処理型合金で、マグネシウムとシリコンが一定の含有比で添加されています。このアルミニウム合金は、強度、耐腐食性共に良好で、押出し加工性に優れているために、建築用サッシ等に使用されています。
この台座のサイズは50×50mmで厚みは3mmのものを使用し、所定の位置に穴をあけることで製作することができます。厚さ3mmは薄すぎると感じるかもしれませんが、この素材は非常に強度があり、撓んだりしません。
モータ台座は、モータ位置決め板にある6mmボルト穴で赤経軸及び赤緯軸に固定されます。
ステッピングモータは、台座にあけた4か所のモータ保持穴に通した3mmネジとスプリングワッシャなどで固定されます。モータが固定された状態が下の写真に示されています。赤経及び赤緯軸に取り付けられた平ギアの位置は、それぞれの軸のウォームギア軸側の平ギアの位置に合わせます。
12.7 ビクセンGP赤道儀の赤経 モータ台座の設置
<赤経軸へのモータ台座の設置>
42mm各のステッピングモータを採用すると、モータとウォーム軸との間隔が34.7mmになってしまいます。この間隔に合う0.8ピッチの平ギアの組み合わせは、標準ギアでは48歯と40歯の組み合わせになってしまいます。GP赤道儀におけるギアとしてはやや大きめですが使用できないとはありません。この場合、ウォーム軸側に軸穴6mmで48歯の平ギア、モータ側は軸穴5mmの40歯ギアということになります。
この組み合わせでは、標準で付いている赤 経ギアカバーをかぶせることができません。純正のステッピングモータは減速機付きなのでモータの駆動軸の位置が8mm程外側に位置しますから、使用する平ギアを歯数が小さい小型のギアにすることができます。この場合、ウォーム軸側に軸穴6mmで40歯の平ギア、モータ側は軸穴5mmの32歯ギアということにすることができます。減速機付きなのでモータを採用した場合は赤経ギアカバーをかぶせることができる利点がありますが、ステッピングモータをPM型のものを採用せず、ハイブリッド型のものを採用するとモータの値段がおよそ3倍になってしまいます。このため、現状ではハイブリッド型の表示んモータを採用することにしているのですが、上記のようなギアの不利点があります。
12.8 ビクセンGP赤道儀の赤緯軸 モータ台座の設置
赤経と同じモータと台座を採用すると、GP赤道儀では特定な回転位置でこの駆動装置と赤経軸が干渉することがあります。これは、機構的な問題で35mm角以下のモータが望ましいのですが、それでも回転位置によって赤道儀の赤経部と赤緯モータが干渉します。
とはいえ、35mm角のモータの方が42mm角のものよりもサイズ的には有利なのは事実ですが、トルクの問題から若干の考察が必要です。
35mm角のモータ用の台座は別途設計してみることにします。35mm角のモータ用の台座のサイズは40mmアルミのLアングルを利用することになりますが、このサイズはGPの赤緯用には最適なサイズです。というのも、対座の受け軸と赤経回転の終端(ウォーム部)までがちょうど42mmほどの余裕があるからです。42mm角のモータの場合はLアングルの厚み3mm分はみ出してしまい、最小でも45mmのLアングルサイズがないとモータ保持穴を確保できません。
12.9 ビクセンGP赤道儀の赤緯軸 35mm台座の製作
35mm角のモータ用の台座は赤経用と赤緯用は形状を変えなくてはなりません。それは、赤経用の台座を赤道儀に設置するためには少なくとも50mmほどの幅がなくてはならないからです。
赤緯用の台座は小さければ小さいほど良いのですが、アルミのLアングルは40mmが丁度あるのでそのサイズを利用します。アングルの厚みは3mmを用いますから、実質的な領域は37mmですから、35mm角のステッピングモータの場合にはほんの少し余裕ができることになります。
35mm角のモータはオリエンタルモータPKP233D15A-Lを採用することになりますが、このモータには減速機付きのものがありません。ですが、このモータは高トルク(0.2N・m)で標準型の42mm角のモータのもの(0.24N・m)と大差ないものなのです。
12.10 小型赤道儀コントローラのモータ端子の設計1
<小型赤道儀コントローラ ステッピングモータ信号ピンの設計>
小型赤道儀コントローラ・ボックス(60W×45H×85D)用のモータ端子のピン設計で、ボックス端面のスペースの関係で端子はminiDIN 8ピン・コネクタを採用した場合の信号ピンの配置です。D-SUBは9ピンで1ピン余りますが、miniDINピンは全てピンにステッピングモータの信号が入ります。
図 コントローラ側 miniDIN-8ピンコネクタ 信号配置
<赤経ステッピングモータ>
赤道儀 軸
<ピン番号> < ピン信号記述>
1 赤経モータ A1 信号出力
2 赤経モータ A2 信号出力
3 赤経モータ B1 信号出力
4 赤経モータ B2 信号出力
<赤緯ステッピングモータ>
<ピン番号> < ピン信号記述>
5 赤緯モータ A1 信号出力
6 赤緯モータ A2 信号出力
7 赤緯モータ B1 信号出力
8 赤緯モータ B2 信号出力
図 赤道儀側 赤経(RA) Mini DIN 4ピン 信号配置
<赤経ステッピングモータ>
<ピン番号> < ピン信号記述>
1 赤経モータ B1 信号出力2 赤経モータ B2 信号出力
3 赤経モータ A1 信号出力
4 赤経モータ A2 信号出力
<赤緯ステッピングモータ>
<ピン番号> < ピン信号記述>
1 赤緯モータ B1 信号出力
2 赤緯モータ B2 信号出力
3 赤緯モータ A1 信号出力
4 赤緯モータ A2 信号出力
12.11 ビクセンGP 赤道儀コントローラのモータ端子の設計
<赤経ステッピングモータ>
赤道儀 軸
<ピン番号> < ピン信号記述>
1 赤経モータ A1 信号出力
2 赤経モータ A2 信号出力
3 赤経モータ B1 信号出力
4 赤経モータ B2 信号出力
<赤緯ステッピングモータ>
<ピン番号> < ピン信号記述>
5 未接続
6 赤緯モータ A1 信号出力
7 赤緯モータ A2 信号出力
8 赤緯モータ B1 信号出力
9 赤緯モータ B2 信号出力
<赤経ステッピングモータ>
<ピン番号> < ピン信号記述>
1 赤経モータ B1 信号出力
2 赤経モータ B2 信号出力
3 赤経モータ A1 信号出力
4 赤経モータ A2 信号出力
<赤緯ステッピングモータ>
<ピン番号> < ピン信号記述>
1 赤緯モータ B1 信号出力
2 赤緯モータ B2 信号出力
3 赤緯モータ A1 信号出力
4 赤緯モータ A2 信号出力
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